三途の川の3つ目のお話

このお話は私が自衛隊を除隊後に千葉県市原市の外食産業で店長を務め、その会社が倒産する直前に退職して、二年間ほどタクシー運転手をしていた25才の時に勤務した会社の先輩から聞いた実話です。

「このごろ何だか知らないけど、やけに左腕がシビレるんだよ。おかしいんだよナー、夏の昼間のこの暑さだっていうのに冷たくなってシビレるんで長袖のシャツを着てないといられないんだよー。
もっともオレの場合はこうして、ほら、入れ墨をしているからな、入れ墨の所はいつも冷たいんだけどな。それにしてもおかしいんだよナー」

「えーっ、Sさん入れ墨をしてるんですか」

「しんちゃん、知らなかったのかい。Sさんは昔、東京でヤクザの組に入っていたんだよ」

「ええー、そうだったんですか、Oさん」

「そうだよ、Sさんは中学生のときにいじめられている人を助けに仲裁に入ったんだが、刃物を持って暴力を振るっていた男が興奮して言うことを聞かずにいじめられていた人が危ない所を、Sさんがな、義憤にかられてその男の刃物を取り上げ勢い余って男の腹を刺してしまったんだ。
それでSさんは殺人未遂で警察に逮捕されたんだ。幸い刺されたその男は一命をとりとめたので、後日罪名は障害罪に変ったんだ」

「Oさんの言うとおりなんだよ、しんちゃん。それでオレは少年鑑別所に入れられ、その中で知り合った友達から出所する前に『どうせ世間に出たって誰もまともにオレ達のことを相手にはしてくれないんだからさ、ナーSよ、オレが知ってる(ヤクザの)組に一緒に入らないか?』って誘われて、それでそいつと一緒に組に入ったんだよ。
いろいろ大変だった。組をやめられるのは親分が亡くなった代がえの時じゃないと許されなかったからな」

「へえー、そうだったんですか…」

それから何日かたってSさんは検査入院しましたところ、そのまま入院して手術を受けることになったと大先輩のOさんから聞きました。

「しんちゃん、Sさんの手術が終わったらお見舞いに行くんだけどな、オレと親しい仲間のIさんと一緒に行かないかい?」

「そうですか、Oさん、分かりました」

「なんでもSさんの手術は大変だったらしいよ」

「そうだったんですか」

それから、手術後のSさんの回復具合を待ってOさんIさんと私の三人で手みやげを持って労災病院へお見舞いに行きました。
Sさんはとても喜んでくれました。

Sさんは何日間入院していたでしょうか、Sさんが退院してから、仕事の合間にSさんから聞いたお話です。

「いやー、久しぶりだな、しんちゃん。見舞いに来てくれてありがとう。
いやー、オレはさ、三途の川を見てきたよ」

「へー、そうなんですか。三途の川ってどんなでしたかSさん?」

「うん。オレが手術室の手術台に乗せられたときに、これはまずいと思ったね。なぜかって、執刀する先生の他に若いインターンの医者がぞろぞろ十何人もついてきたからなんだよ。
ああ、オレは半分実験台になるんだなってピンときたんだ。
いろいろ検査して、オレの左腕から左半身のシビレが、首の骨の内側に骨がでっぱって出来てそれが脊髄神経を圧迫して出ている症状だと分かったんだ。
すごく難しい手術で、それで大勢のインターンの医者に囲まれて手術を受けたんだ。
麻酔って利くもんだよ。口に当てられてスーッと一回吸い込んでフーッと息を吐いて、もう一度スーッっと吸ったら、コロッと意識が無くなったよ……。十何時間の手術だったそうだよ。もうダメかなと半分は思ったけど、おかげさまでこうして元気になった
それでさ、三途の川の話なんだけど……。
暗い暗い、真暗やみの空間にオレがいてさ、遠くに明るい世界が見えて歩いて近づいて行くと川が流れていてさ。
そうだなー、幅十メートルでせいぜい腰ぐらいの深さの川だったな。
向こう岸は奇麗な一面の花畑だったよ。もっともオレの場合は蓮の花は見えなかったけど。
向こう岸があんまり奇麗なんでオレはフラフラっと膝位の深さまで何歩か川に入ったら、向こう岸に突然、鐘馗(しょうき)様のような恐い顔をした髯の男からものすごい形相でオレはにらみつけられて大声で「来るなーっ」って一喝されたんだ。
オレの心臓は今にも止まりそうなほどドキドキして、オレはふり返ってこっち岸の真っ暗な世界へ一目散に走ったんだ。とにかく恐くて恐くてたまらなかった。
すると、フッと目が覚めたんだよ」

2013年8月16日 金曜日
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